仁張工作所が主に製造しているスチールOEM製品やオリジナルロッカーなどのものづくりにおいても、昨年位から大きな二つの困難、『鋼材をはじめとする原材料の高騰』と『電気関係をはじめとする部品不足』に見舞われ大変苦労している状況です。サプライヤーとしての下請けのお仕事では、お客様での製品化ができないため、注文数が減少してしまったりもしています。
特に年度が明けた4月以降のご依頼の入り方は、厳しいものがあります。そんな中、私たちが現在取り組んでいる方針について申し上げます。
昨年、私が社長に就任した際に、完全土日祝を休日とし、年間240日稼働としました。ツインの棚を持つ複合加工機を導入し、休日の鋼材入れ替えも極力しなくてよいように変えていきました。
また定時時間を8時間から7時間40分に変更、密度を濃くしよう、と取り組みました。煩雑だった業務やルールをできるだけ削ぎ落し、シンプルにすっきりとした考え・行動・職場にかえていっているところです。以下はその方針に沿った考えや行動の事例です。
お仕事の整理をする中で、複合加工機3台で十分足りる、と判断し、時間削減の目的で、それまで複数あったネスティング方法の一元化とタレパン単体機を手放す決断をしました。ネスティングソフトについては、Dr.Abeに一本化を行い、お客様や製品に関係なく、2週間先までの同鋼種・同板厚のデータをCSVで取り出し、一回のネスティングで少しでも歩留まり率が高くなるよう取り組むようにしました。端材を何度も使うことを無くし、ネスティング効率を極めていく方向性で取り組み、現在のところ、それが功を奏していると思っています。昨年のスチール材高騰と以降の高止まり、現在進行形のステンレス材の急騰という逆風を弱めるべく取り組んでいます。
間接業務においては、コロナ禍もあり、全社的な会議を月1回、1時間程度のリーダーミーティングのみとしました。社内のコミュニケーションツールとして活用している“direct”に掲示板や会議室予約など便利なツールを盛り込み、活用度合いが数段上がってきています。“direct”では、その他『品質情報共有・クレーム対応』『外注委託加工先様との情報共有』『配送指示』『設置工事共有』などとても有効なグループがたくさん設けられて、業務のシンプル化・合理化につながっています。
私が全員に話をするのは、月曜日朝の朝礼だけとなっています。その他は、日々の部門単位での朝礼や昼の進捗確認をしていますが、いずれもごく数分の短時間で終わらせています。当社製造部は若いメンバーが多く、臨機応変に対処していってくれています。頼もしい限りです。仕事量の減少によるところもありますが、それを抜いても残業時間がほとんどないことは大きな効果だと思います。
仁張工作所が主に使用している、厚さ1ミリ前後のスチール薄鋼板は、3年前の約2倍の価格帯になっています。恐らく、過去30年にあった一時的な高騰ではなく、この水準は高止まりのまま長く続きそうです。3年前は1㎏あたり90円だったものが170円~180円となっているのが現実です。
そんな中、家族経営で人件費を低く抑えられる町工場や順送プレスなど自動化設備を保有している大工場とことなり、人数的にも設備的にも中途半端な規模の当社においては、特長をアピールしていかなければいけない、と最近思っています。お客様図面をそのまま製品化すること、差別化が難しいブランクや折り曲げだけの部材提供ではなく、開発や図面をはじめとする製作指示書類の作成から製造、設置やサービスまで含めたものづくりをすることが、“工作所”と名付けた創業者である父親の想いだったのでは・・・と最近思います。
昭和39年10月1日。東海道新幹線が開通した記念すべき日、東京オリンピックを1週間前に控えた日本が元気だったころにうまれた仁張工作所。32年後の平成8年、創業者の仁張清之介は会長となり長男の仁張正之が後を継ぎました。その3年後次男の仁張茂が入社、昨年3代目社長を継ぐこととなりました。
その後においても金庫設計において卓越していた清之介の知識は、美しい紙の図面となって設計部隊に引き継がれていきました。80歳を超えても、スチール家具の図面をバリバリとドラフター(製図板)でひいていました。体調を崩す85歳くらいまでひいていたと思います。正確で緻密な図面は、ものづくりの専門用語でいうところの、いわゆる“あそび”(余裕しろ、逃げ)を肌で理解していました。A0サイズ以上のマップケースや特大ロッカーなどは特に得意でした。物理の知識にも長けていたこともあってか、私(茂)から見ても“目からうろこ”なことがよくありました。
『自動倉庫に入れるパレットが荷重に耐えられるように後付溶接で底板をフラッシュ構造にした』『硬貨回収庫の硬貨が詰まらないように中点に丸棒を溶接してスムーズにした』『貴重品ロッカーの扉があけやすいように曲げ角度を89°(-1°)とした』『郵便局の1枚のはがきが指で取り出し易いよう、差立て区分棚の底板に傾斜をつけた』
・・・その設計ノウハウは、2D-CADへ、更には3Dモデリングへと引き継がれています。蓄積されたそれらのノウハウは、溶接をはじめとする加工ノウハウと共に、仁張工作所の何よりの知的資産です。スチール家具の9つの基本形をもとに、その後サイズやステンレス・アルミなどの別素材についても、経験値を積み重ねて現在があります。
【別注スチール家具・オーダーメイドについては、ごちらをご覧ください。】
箱物板金(スチール家具やロッカー)の設計力に自信をもっている仁張工作所においては、“お客様のこえ”がオリジナル商品化につながることが多くあります。時代の変化とともにカタチや機能も変化していきます。そしてそのことが楽しいと感じます。貴重品ロッカーは、錠前式からスマート方式へ、スポーツロッカーはワークロッカーへ。ホームページに色々な作品を掲載し、ご覧いただくことでお客様の欲しいイメージも拡がると思います。
【ユニーク発想のオリジナルロッカーについては、ごちらをご覧ください。】
お客様の製品化の板金部分を“まる請け”できる強みがあります。1枚単位の展開図(バラ図)は不要です。モデリングデータをお送りいただくことで、機械や装置の設計者の方の労力・時間数を大幅に削減することが可能になります。また板金サイドから合理的なご提案(例えば鋼種・板厚の共通化・強度・シリーズ展開)をできることが強みです。
【共同開発=伴走。お客様とともに・・・。共同開発のご相談についてはごちらをご覧ください。】
それまで下請けサプライヤー一辺倒だった当社において、2000年に貴重品ロッカーを自社商品として発売したことは、私の良き思い出です。枚方パークさんから始まった納品に自分で行くことを私は楽しみにしていました。お客様のこえを直接聞くこと、アンケートでのお声をもとに、“電気式貴重品ロッカー”の試作開発に取り掛かったのは2005年の暮れのことでした。自信を持って取りかっかったものの、なかなかうまくいかないこと、原価が下がらず100万円をこえてしまったこと・・・2007年に発売したものの約10台の実績であきらめてしまう結果となってしまいました。(デザインもよかったのに・・・)やはり市場価格にあっていなかったのか…残念な気持ちでした。その後も私は何度も失敗をしてきました。アリババでの海外販売や鳴かず飛ばずの新商品。。。でも、たとえ1回こっきりであってもお客様に喜んでもらえて、きちんと採算がとれる、自社の勉強・ノウハウになるものの方が多かったのも事実です。“工作所”であるためには、今後も“トライアンドエラー”を繰り返していきたい、と思っています。そして、諦めていない気持ちから、ウィズコロナを意識した『ICカードによるスマートロッカー(タッチレスロッカー)』をこの度発売することができました。大きく原価をさげることができたこと、15年ぶりの実現は嬉しい気持ちです。世間への認知度が低い今がチャンス!?ですよ。ご相談をお待ちしています。
【現在のタッチレスのスマートロッカー N-forme+(エヌフォルムプラス)については、こちらをご覧ください。】
(下の写真は2007年に発売した電気式貴重品ロッカー)
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