生産管理システム

『生産管理システム』とは、“受注・生産計画・工程管理・購買管理・在庫管理・出荷管理・請求処理など全てのデータを一元管理したシステムのこと”を指します。
当社では、その中でも近年加速化している“多品種変量生産”・“工程手順の複雑化”・“工程負荷の平準化”・“委託加工”を確実に管理する目的で2005年に導入しました。

01当社の生産管理システムの特長

当社の生産管理システムはオリジナルの生産管理システムの製作をプログラム会社に依頼する形ではなく、通常のパッケージシステムをカスタマイズ化していく形を取りました。EDI(Electric Date Interchange)の導入を視野に入れ、スタンダードを用いるのが得策との考えからの結論でした。「基本構造は、受注単位(ロット)で受注番号を付与し、それを基準に全ての管理を行うスタイル」を取っています。作業指示、購買業務、出庫業務、出荷業務・・・全ての業務の基準をそこに置くスタイルは以前からの業務の進め方と同じであり、慣れ親しんだ仕事の進め方を発展させる形を採ることによって、生産管理システムの無理のない導入・移行を進めることができました。全ての業務の流れはシステム内で管理され、人間では対応しきれない厳密な管理が行うことができ、お客様からの要求事項に対しても、よりきめ細やかな対応ができるようになりました。

02システムカスタマイズポイント(導入時)

鋼材重量 鋼材の重量はJISにより定められたいわゆる“丸め”の計算を出来る形にカスタマイズを行いました。
板金業界特有の計算方法で、再度プログラム会社の方々と学ぶ事で、知識を深める事が出来ました。
鋼材単価 単価マスタに材質・板厚、により単価を持たせるようにしました。通常の一品一葉の単価ではなく、 あらゆる条件に反映される為、初期設定は苦労の連続でした。
生産計画 生産計画を設定する指標として、製造負荷工数・付加価値金額が見えるようカスタマイズしました。
以前のエクセルベースでの計画表を意識した形でのスタイルで、現在のシステムの基幹とも言える部分です。
在庫管理 OP管理と製番管理との間を取った形での管理に修正をかけました。弊社の小ロット多品種生産のデメリットを克服する形で最適の発注が出来る形をプログラム会社と悪戦苦闘を繰り返し、現在の管理方法に落ち着きました。他社でも使用すればメリットが出てくると確信が持てる程のでき映えで、購買金額の安定の大きな役割を担っています。
データの活用 システム内のデータをエクセルなどで加工出来るよう、CSV機能を搭載し、全てのデータ利用を可能にしました。様々な報告書の作成など有効活用されています。

03現在のシステム機能

導入8年目を迎え、生産管理システムを使ってできることの幅も拡がってきました。 以下はそれら使用機能の主な例です。今後も多様化するお客様からの要求に応えるべく使用機能の横展開と新機能習得・運用化に取り組んでいきます。

EDIでの取引き
2011年には、導入時から意識してきたEDI(Electronic Data Interchange)での取引をA社様と実施する事になりました。お客様から頂く受注情報の入ったtextデータを、専用回線を通じて弊社の生産管理システムに取り込む、といった人を介さない受注形態が実現できました。内容は"レンジの決まったフリーサイズの箱物板金を1個からの多品種変量で自動加工に着手する"、といったものです。人員削減、事務工数の削減という効果も大きいですが、何よりも、スピードという点では革新的な速さで処理が出来るようになりました。そこで短縮された納期をお客様へ反映する形で短納期への取り組みとしています。

EDIとは・・・商取引に関する情報を標準的な書式に統一して、企業間で電子的に交換する仕組み。受発注や出入荷などに関わるデータを、あらかじめ定められた形式にしたがって電子データ化し、専用回線やVANなどのネットワークを通じて送受信する。紙の伝票をやり取りしていた従来の方式に比べ、情報伝達のスピードが大幅にアップし、事務工数や人員の削減、販売機会の拡大などにつながる。データ形式やネットワークの接続形態は業界ごとに違うため、他の業界の企業との取引をEDI化するのは難しかった。しかし最近ではインターネットの普及に伴い、WebブラウザやXMLなどインターネット標準の技術を取り入れたり、通信経路にインターネットを用いることが増え、業界を超えた標準化、オープン化が進行している。
作業工数の把握
導入時(2005年)から加工データとして積み上げてきた作業(加工)実績工数が、システム内に蓄積されていっています。リピート製品については、受注番号(ロット)毎の加工実績(時間)を平均化していく仕組みとなっているため、回を重ねるほどにデータ精度が高められる仕組みです。生産計画立案や見積作成に役立つことはもちろん、そこから負担の大きな製品・改善が必要な製品を洗い出したり、お客様に対して代替工法等のVE提案をしたりと、多方面に活用できるようになりました。
現品票による識別管理
生産管理システムの導入により、多種多様なアイテムの管理が出来るようになりました。一方、製造現場作業として、それら数多くの部品を従来の方法で管理する事は、非常に難しくなりました。あるべき姿の現品識別管理を確実に実行すべく、生産管理システムをカスタマイズし、各作業工程に対して作業指示書とセットでシステムから現品票を発行させる仕組みをつくりました。実際運用してみると、初工程である機械課に対しては膨大な枚数の現品票が毎日発行されます。組立・塗装→仕上課へと工程が進むにつれて、現品票の枚数も減っていく仕組みです。各工程は、作業指示書に従って加工を行い、作業完了後には実績入力をし、現品票を貼付けした上で、次工程へと送り出す仕組みです。導入当初は苦労を伴ったその運用も現在は定着化し、物とデータとのリアルタイムに近い管理ができるようになりました。
生産技術情報の活用
製品実現のために、製品の“マスターデータ”を作りこんでいます。オーダーメイド製品等を得意としている当社は、新規製品や設計変更部品等が多く、そのたびに新たにマスターデータを作成します。すべての製品は、鋼材・部品・梱包材・加工先ほか細部にわたるまで階層的にデータとして作りこまれ、それら多岐に渡る部品群の中においては、当然共通部品も多数存在しています。生産管理システムの生産技術情報により、階層化されたデータの逆展階での部品構成が把握でき、また製品ごとの一定期間内の必要数(所要量)も把握できるため、それらをまとめづくりする等の運用上の工夫で、完成品を作り出すトータル工数の削減に努めています。この取り組みはシステム導入の大きな効果であり、今後さらに工法の選択や部品加工先の選定を進めていくことで、段取り等、把握しにくい時間短縮効果が得られると考えています。
マスターデータ化
生産管理システム導入にあたって、一番の時間的なデメリットはマスターデータの作成でした。ここは従来の仕組みではカテゴリーとして存在しなかった作業工数でした。しかし、実際蓋を開けてみると、そこをきっちりと作り込む事によって、従来各担当者で実施していたエクセルでの手管理がなくなり、またリピート製品での手配間違いもなくなりました。人的ミスによる在庫切れのようなこともなくなりました。トータルでの時間を鑑みると、マスターデータ作成に時間を惜しむことはないと今では実感として感じています。また、このマスターデータによりPDM(Product Data Management)が実現されました。エクセルベースでの部品表は存在しましたが、一元管理される箱がありませんでした。その箱として生産管理システムが活用され、部品の設計変更時等にも、どの製品に影響を及ぼすのか、それで問題ないのか、即座に確認出来るようになりました。
委託加工先管理
板金サプライの短期集中化・時節による工程負荷の集中化の軽減や、(パイプ曲げ・アルミ加工等)自社で対応できない加工を含む場合の対応として、委託加工先業者様に加工依頼をする場合があります。最近では、商品全体よりもむしろ部品単位で加工を継続的にお願いするケースが多くあります。生産管理システムによって、“自社加工と委託加工を融合したトータルでの工程管理”をスムーズに行えるようになりました。 東大阪は町工場の集合体です。様々な業種がひしめき合い、それぞれにそれぞれの得意分野を武器に生業に励んでいます。委託加工をお願いする場合に於いても、注文書発行・リードタイムの設定・納期管理・当社からの支給部品の管理・仕入管理等、それら全ての運用を生産管理システムで行っています。今後、システムの更なるカスタマイズ化によって管理レベルの向上に繋げることも視野に入れています。
関連する主な機能
仕入管理画面
仕入管理部材手配と仕入が一対で構成されており、必要以上の無駄な仕入の防止、仕入忘れの防止ができるようになっています。
入荷管理画面
入荷管理日々のルーチンワークである入荷業務に対し、入荷予定を確認し、それを消しこみ、漏れを防ぐ仕組みになっています。
生産進捗管理画面
生産進捗管理どこまで工程が進んでいるのか、誰でも確認できるようになっており、各課での作業実績入力、各部材の仕入入力に連動しています。
在庫管理画面
在庫管理部品の在庫数、在庫場所、今後の所要量が確認出来ます。在庫数にオーダーポイントを持たせる事ができ、それにより部材の不足を防ぎます。

04更なる向上を目指して

仁張工作所の特長をより強化していくため、今後の方向性として、“製造リードタイムの短縮(短納期化)”と“小ロットかつタイムリーなご提供(納品)”を目指していきます。例えば、メーカー様への“欲しい時に欲しいだけ”の納品をさせていただくことによって、仮に板金部品の単価が上がったとしてもトータルコストとしてのメリットを演出していくことが可能であると考えます。ご依頼時に生産スケジュール等を細かくヒアリングさせていただき、必要部材を納入スケジュール通りに供給させていただくようにします。

また一回の生産量(ロット)についても、お客様の納入希望スケジュールをお聞かせいただいた上で、“どのような部材生産スケジュールや手配必要か”を逆算してシミュレーションしていきます。これらお客様の要求に、より高いレベルで応えることができるようになったのも生産管理システムによるところが大きいといえます。

実際、納入後1年で本格稼動に至り、本社工場・委託加工先(外注先)様を含めた全社的なネットワークにより、各工程が有機的にリンクし、工程間のロスタイムが極めて小さくなりました。このシステム導入により、従来の約20%の生産性の向上、ならびに25%のリードタイムの短縮が可能となりました。今後も練磨していくことによって、更なる改善に繋がると考えています。

そして、その延長上の取組みとして、大きく以下の2つの課題にチャレンジしていこうとしています。

JIT(just in time)生産方式と見込生産の融合
当社の生産管理システムは基本的に“受注生産”、つまりJIT生産を見越した形でのシステムになっています。JIT生産の利点として、仕掛品在庫の減少によるキャッシュフローの安定、変更管理への柔軟な対応等が挙げられます。しかし製品の性質上、“見込生産”が必要な場合も存在します。

JIT生産方式では物理的にリードタイムが不足するもの、リードタイムの長期化による販売機会損失が発生するもの等です。それらを補う形で見込生産がありますが、JITと相反するデメリットが存在してしまいます。仕掛品在庫で工場が占拠され、在庫品の移動に時間を費やすといった難点も発生し易くなってしまいます。

そのような問題点を解消すべく、細分化した部品展開の中で、“JITと見込の融合”を図ろうとしています。基幹はJITにあります。そこから見込生産の枝、JITの枝をぶら下げ、更には見込生産の葉、JITの葉を芽生えさせるような生産方式こそが、現在目指している融合生産方式です。この考え方は現在の道標であり、1年後にはもっと違った形の生産方式を求めているかもしれません。変化に柔軟に対応し、変化し続けること、それに呼応する形でインフラも変化していくことが必要になります。特に生産の根源にある、生産管理システムは今後も未来永劫に変化し続ける事になると考えています。
スケジューラーの活用
決められた納期を守るために、生産ラインの能力や稼働状況といった制約条件を考慮しながら、最適な生産計画を計算する業務支援ソフトウェアのこと。生産計画を立案する際には、リソースの競合や段取り替えに掛かる損失、ロットサイズと待ち時間など、複雑な諸要因の組合わせから最適な作業の割り付けを導き出す必要があるため、専用のソフトウェアが発達し、その後欠品を補うために必要な資材を手配する基本ロジックが普及しました。その後登場したAPS(Advanced Planning & Scheduling)と呼ばれるシミュレーション中心のロジック等についても勉強し、それらを利用した形でのスケジューリングをうまく活用することで、もっと簡単に生産計画立案ならびにその最適化ができないか、を考えています。
原点回帰による再考
使い始めて8年、原点に帰ってみるに、そもそも生産管理システムとは一体何の為のシステムで、どのようなものなのでしょうか?生産管理とは他の管理とは違った性質にある、と考えます。例えば、会計管理、販売管理、在庫管理、品質管理とは、事前の想定は当然ありますが、管理という面では、実際に起こった事柄を管理することになります。

しかし、生産管理は様々なデータを活用し、計画を作り、その計画通りに物事が進捗しているかを管理するということです。つまり、自らで管理する事象を作り、それを管理しなければならないのです。生産管理により、決定した生産計画により、納入日程は決定され、それによりお客様の元に製品が届けられます。作り出す管理には膨大なデータが必要になります。部品の使用数量、リードタイム、部材の使用量、リードタイム、どこの購入先から購入するのか、どこの委託加工先で加工するのか、社内ではどの工程を通過し、どの工程にどれだけの工数がかかるのか、など様々なデータが必要になります。そのデータを多品種少量の生産が主流となった現代で、人間の記憶の中に留めるには限界があります。また標準化の観点から、企業として継続して存在するには、人に頼る作業は大きな問題となります。

その問題を解消する為の様々なデータの集合体が生産管理システムです。システム内で、「所要量等を計算し、生産計画を立案し、それを人手で調整をかけていくといった仕組み」です。まだまだ万全のシステムではありませんが、多種多様化され、加速度的にスピードの増していく市場において生き残るには必須のアイテムです。それを有効活用し、会社の強みとすべく取り組んでいきたい、と考えます。

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